新年のご挨拶&コラム「活き蟹とオーダーメイドタキシード」

旧年は多くの新郎新婦様にご来店頂き、私たちスタッフにとって本当に素晴らしい1年となりました。

今年も多くの船出を迎える皆さまをサポートできるよう、一針入魂でオーダータキシードを作ってまいりますのでどうぞご贔屓くださいませ。

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オーダータキシードは難しい?

与太話ではありますが、昨年の課題として、「オーダーはやっぱり難しい」と感じさせてしまったお客様がちらほらといらっしゃったことがございました。

THE GENTS のオーダーメイドシステムはイージーオーダーと呼ばれるオーダーメイドの方法で、これは様々なパターンの型紙から最適なものを選び、肩、袖、首、股上、腰、裾など数十箇所を採寸して独自のフォルムを作りだすものです。

さらに上記に加えて、タキシードのポケットやラペルと呼ばれる襟の種類や幅、ボタンなど多くのことを自分で決定しなければなりません。(もちろんスタッフがサポートしますが汗)

よってセレクトショップなどでサンプルの衣装を着て、簡易的に肩、袖、パンツの丈を数か所測って、「はい、OK」というパターンオーダーに比べて難易度が高いと思われる方も多くいらっしゃいます。

無論、多くのことを自分で決定できるオリジナリティは高いのですが、「オーダーが初めて」「レンタル感覚」「面倒なのは嫌」というお客様にとってハードルが高く感じてしまわれたのは反省でした。

自分たちスタッフは何十着もスーツやタキシードを作るので、むしろこの選択肢の多さが楽しいのですが、初めての時はとても緊張して、どういう注文をしたのかさえ頭が真っ白で恥ずかしい思いもしたのがはるか昔のようです(笑)

生きている蟹を捌いて、調理するのに1日かかった話

そんなことを考えていた年の暮れのこと、東京の商社を辞めて関西に移り住み、事業を始めた大学時代の友人から「鳥取のいい蟹があるんだけど正月にどう?」と営業LINEが来まして、まあまあの金額を払って家族分の蟹を注文したのが完全に忘れたころに届きました。

ヤマトのクール便で中型ダンボールくらいある保冷発泡スチロール箱を空けると、中には元気に動いている形様々な蟹達がワサワサと合計6匹…。(写真はイメージです)

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普段料理もろくにせず、魚すらもさばいたことのない私の手元に元気なデカイ蟹達がこんにちはと到着したのはよいものの、正直「これどうしたらいいの?」と焦るわけです。

蟹の種類もわからない、茹で上がって切れ目の入った冷凍ガニしか食べたことのない自分にとって、活きた蟹をどう調理すればよいのか全く分からず、とりあえずベランダに出し放置して、忘れた振りをかましてみたものの、ガサガサ聞こえてくる蟹達の足音に、何故かたかが蟹なのに半日不安でした(笑)

蟹は食べ方、種類で剥き方や下ごしらえが全然違う

ご存知の方もそうでない方もいらっしゃると思いますが、たかが蟹なのに、蟹は食べ方によって剥き方と下ごしらえの仕方が全然違うのです。また蟹によって身体の構造が異なるため、解体の仕方もちがいます。

これまで切り分けられた冷凍ガニしか食べたことのない自分にはそんなことも知らず、「蟹って鍋にドボンでハサミで切れ目入れときゃOK」みたいな安易な考えで生き蟹を注文したこと、そして説明書が一切無く「美味いからさ!」で済ませた友人を一瞬恨みましたが、注文してしまってすでに蟹達が足元の発泡スチロール箱の中で元気に動き回っている時点で諦めるしかありませんでした。

幸いGoogle全盛期の昨今ですので、macbook 2台とiphone 2台を駆使して調べ上げ、震える手で蟹を掴み、蟹の汁で汚れた指でなんどもiphoneに映るYOUTUBEの画面をスワイプして…無事捌き切ることができました。

今まで食べてた冷凍ガニは本当に蟹だったのか?

茹でと鍋、2つの調理方法で食した今回のLiving 蟹でしたが、お味はというと、蟹のじゅわーっとしたエキスが口中に広がり、なんとも言えない磯のふんわりとした香りが鼻孔を周り、蟹の味はふっくらぷりっとで最高です。「蟹は美味い」それは知っていたけれど、これまで食べていた蟹とはもはや別次元の未体験ゾーンな旨味です。

手間も時間も凄まじくかかった上、古い友人を恨みさえしましたが、生きた蟹を食べるというこれまでに体験したことのないエクスペリエンスが自分に新しい「食の楽しさ」を教えてくれたとさえ感じました。

オーダーメイドタキシードと活き蟹

この活き蟹を自ら捌いて、調理方法を選び、食べることで、新たな蟹との出会いを果たした自分でしたが、この時に感じたのは、「オーダーは難しい、やったことがない」「面倒なのは嫌」とオーダーメイドタキシードに難しさを感じていたお客様の事でした。

タキシードの採寸の様子

結婚式の場合、確かに既製品のレンタルタキシードを薦められるがままに着るのは、楽だし簡単。ですが、手間暇をかけてこれまで体験したことのないことにトライした先にあるものは…きっとこれまでに感じたことのない満足感と、完璧な誂えられた自分だけの1着です。

未体験ゾーンなエクスペリエンスの先にあるもの

たかが蟹(=洋服)ですが、その奥深さと今だかつて無い感動を味わうには、何事もやってみることが重要なんだなとつくづく感じた年の瀬でございました。

「オーダーメイドは難しい」そう考えられて一歩踏み出せ無い方、ぜひ私の拙文を思い出してチャレンジしてみてくださいね。