なぜ結婚式のレンタルタキシードは派手なのか?その答えはアメリカの歴史にあった

男性用の婚礼衣装というとフロックコートやロングタキシードを想像する方が多いでしょう。特にこれまで日本の結婚式で象徴的であったのは、生地の光沢感や、着丈の長さ。どちらも主役としての存在感を発揮させるものでした。

以前に海外ではブラックのタキシードやブラックスーツがメインとご紹介しましたが、何故、海外の衣装とこのような差があるのかをじっくり検証した記事はありませんでした。

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画像:2015年度最新タキシードまとめより

個人的にも実は気になっていて ①日本の着物文化が影響している ②誰か歴史的な有名人がそれを広めた とか考えてみましたが、想像の域を出ず・・・。

今回、解明にあたって参考にしたのはニューヨークで1903年よりタキシードの生産、レンタルを行うAfter Six Tuxedo様の記事。こちらを参考にこの謎を解き明かしてみたいと思います。以下画像は全てAfter Six Tuxedo様の広告です。

 

1,歴史が語るタキシードの変遷

① 1945~ (第二次世界大戦後) 「夜のパーティーを彩る特別な衣装はディナージャケットで決まり!」

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② 1955~ (エンタメ文化の興隆) 「銀幕のスター達がこぞって着用、アレックギネス、, ジェフ・チャンドラー、ジョン・ペイン」

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この時の広告デザインを見ると、ディナージャケットとはスモーキングジャケット(ショールカラー)を指すようです。大変印象的ですね。

 

③ 1960~ (アメリカの経済成長期) 「フレッシュなカラーを着よう、インフォーマルなフォーマルウェアでリフレッシュしよう!」

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カジュアルでもカラーリングが派手です。写真は当時のピエール・カルダンのデザイン。

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第二次世界大戦を経てアメリカは成長の一途をたどりました。ニューアメリカへの舵取りがファッションでもスタートしました。

 

④ 1970~ (ディスコブームがやってくる) 「ディスコブームが爆発的な人気、鳴り響く爆音に合わせて不作法なフォーマルウェアが誕生した」

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After Sixさんのほうではoutrageousという単語が使われていますね。久しぶりに聞いたこのワード「不作法にも程がある」という悲観的な言葉です。この時期一旦フォーマルウェアは間違った進化をしてしまったようです。

ディスコの派手なシャツは、もはや現在のタキシードシャツのヒダとは乖離した、ノルマ達成の際にホワイトボードに貼られる薔薇の花のようですな・・・。

アメリカでもレンタル衣装が流行る

今はオーダーメイドが主流ですが、実はアメリカでもこの時レンタル衣装屋が一時流行りました。”THE BLACK TIE GUIDE”というアメリカ随一の紳士服ウェブサイトのライター”ピーター・マーシャル”によると

「パウダーブルーと呼ばれる水色のウェアを、安価なポリエステル素材で大量生産し、知識の少ない若者をターゲットに売り込んだのがレンタル業者と癒着したブライダル雑誌だった」

と記載しています。なかなか手厳しいお答え。

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日本では当時、高度経済成長期でした。今のようなブライダル産業が興隆し、いわゆる「総合結婚式」が誕生したのがこの時でした。同時に、見た目の豪華さや目先の違うことを狙って、衣装もスタイルも結婚式の本質から目を背けさせた時期だとも言えます。日本中どこでも同じような結婚式が行われるようになってゆき、トコロテン方式とも揶揄されていたそうです。

日本の今の派手な衣装の最初の原点は、このころの海外ディスコブームへの憧れと、高度経済成長期の遺産なのでしょうか。

 

⑤ 1980~ (原点回帰) 「フォーマルウェアが帰ってきた。クラシックへの原点回帰」

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アメリカではディスコブームの終焉と合わせて、再びマイアミバイスなどの人気映画の俳優がこぞってクラシックなタキシードを着用。再びフォーマルウェアの本来の姿に戻ったようです。

一方の日本はというと、1986年から約5年間始まったバブルのまっただ中。ジャパン・アズ・ナンバーワンという言葉生まれたようにアメリカの景気を差し置き一気に経済成長を突き進みました。経済的に余裕が出てくると、冠婚葬祭事はさらに派手に。テレビでは結婚式場のCMがバンバン流れ、ゴンドラに乗って天井から登場など過剰な演出がピークを迎えました。ニーズの多様性がおこり、ハデ婚、リゾート婚、海外挙式、こだわり婚が当たり前になってきたのはこの頃です。

 

⑥ 1990~2000 (クラシック化が進む) 「再び一気にクラシック路線を突き進む、カットとシェイプの効いたクラシックウェア」

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自分としてはかなり意外でしたがアメリカはすでにこの時1980年からの原点回帰路線をまっすぐと進んでいたようです。フォーマルウェアのルールこそ簡素になりましたが、今アメリカで主流のブラックスーツやシンプルなタキシードはこの時よりもさらにベージックに向かっているようです。

結論

①アメリカにも派手な衣装を着た時代はあったが、後に原点回帰した

アメリカでも派手な結婚式の衣装が無かったわけではないようです。特にディスコブームに湧いた1970年のファッションがフォーマルウェアにも影響を与えていたという事実がAfter Sixさんの記事からわかります。しかしアメリカはすぐさま1980年に入ってから再び正統派なフォーマルウェアへと路線を変更していますね。

②日本は今もディスコ時代のアメリカ文化を引き継いでいる

日本の現在の衣装が派手なのは、やはりアメリカの影響ということが否めません。路線変更したアメリカに対して、男性の衣装については1970年から1980年という、たった20年程度の海外のブームをそのまま引き継いでいるというわけです。その時代に日本は、洋式の結婚式スタイルを全身全霊で取り込んだのです。

③知識を持って自分で選ぼう

これがよいことなのか、悪いことのかを判断するのは、読者の方であり、これから結婚式を迎える新郎さんだと思いますし、どんな衣装をお選びになるかは個人の好みだと思います。

しかし、判断の材料となる情報は、公平にシェアすべきだし、知っていて選択するのと、知らずに勧められるがまま選ぶのは違うことです。現在のレンタル衣装のデザインやスタイルをお好みであれば、これもアリです。

もちろん、我々THE GENTSとしては是非一度オーダーメイドでフォーマルウェアを仕立てるという体験を味わってみてほしいなと思いますが・・・。

結婚式は誰にとっても始めての経験です。もし衣装選びに迷ったら是非専門家を訪ねてみてください。

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