一気に冬の気配を感じる今日このごろ、街のサラリーマンも冬支度でコートを着ている方もチラホラ。スーツに合わせる防寒具と言えば、先のコートと合わせてウェストコート、つまりベストですかね。
ファッション通な人はいわゆるベストのことをジレ【Gilet】と呼んでみたりしますが、ジレとはフランス語でインナーとアウターの中に着る袖のない中衣を指します。英語ではウエストコート、アメリカではこれをベストと呼びます。日本だとチョッキ?かな?
ジレとベストの違いは?
ジレとベストは同じような意味合いで使われますが、ベストは前身頃も後ろ身頃もしっかりと同じ生地が使用されているのに対して、ジレは前身頃だけが一張羅の生地で、後ろはキュプラ素材一枚など簡略化されています。
ベストはシャツなどの上から単品で使うこともありますが、ジレは基本的に人に見せるものではありません。
タキシードにベストは必要か?
こちらですが、先日お客様より「結婚式で使う新郎衣装をレンタルしに行ったら、ベストが全部ついてきたんですけど、ベストって着なきゃいけないんですか?」というご質問が。皆さんこれはどう思いますか?
これは絶対○○という回答はありません。ただ着なくてもいいものなのです。
■着る考え方
・1876年頃のタキシード誕生の歴史を考えるとベストは着てもいい。
→本来タキシードは燕尾服やスモーキングジャケットの歴史を辿ってきた。誕生初期の古いタキシードではベストが着用されてきたのだから、ベストは着てもよし、という考え方。
以下の写真は昔のスモーキングジャケットをジレ有りで着こなした例。
・オシャレとしてベストを着用したいから着る。
ちなみにジレを着用する場合はカマーバンドは巻きません。
■着ない考え方
・現代のタキシードではベストを着るという文化は無くなった、よって着なくてよい。
・ベストは本来防寒、作業着としての目的。フォーマルなタキシードは室内着と捉えると着なくていい。
・そもそもカマーバンドがあるのでいらない。
というわけで、新郎のタキシードにベストが必要かどうかというのには考え方しだいでどちらでもいいというのが考えです。
なぜレンタル衣装屋であんなにベストを薦められたのか?
きっとこれまでのレンタル衣装屋さんで取り扱ってきたのはタキシードではなく、フロックコートや燕尾服、モーニングといったベストの着用が求められる衣装だったからなのでは。
要はレンタル衣装屋さんはタキシードとその他の礼服をごちゃごちゃにしてしまっていて、「結婚式の衣装または礼装にベストは無くてはならないもの」と思い込んでしまっているのかと。
①タキシード=ベストはどっちでもよい
②フロックコート、燕尾服、モーニング、ディレクターズスーツ=ベストが必要
昔の結婚式の衣装は②のほうですから、ベストがやたらとくっついてきた、というわけですね。
最後に
あくまでファッションのアクセントとして、古い歴史へのリスペクトとして、ベストやジレを採用するのは必ずしも悪いことではありません。
こちらもご参考ください→新郎衣装の選び方